2023年11月24日

建設業の安全協力会費は原則課税取引では?



建設業の安全協力会費は原則課税取引では?
調査研究部 渡村満明


 以前、建設関連業者の税務調査を受けたとき、安全協力会費は課税仕入れに該当せず不課税取引であるとの指摘を受けた。私は納得しなかったが、納税者は金額が小さいことからこれを受け入れ修正申告書に応じた。
 税務署側の主張の根拠は
消費税法基本通達5-5-3(会費、組合費等)
『同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、当該同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡であるかどうかを判定するものであるが、その判定が困難なものについては、継続して、同業者団体、組合等が資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払いを課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認める。』
である。
 ところで、安全協力会費は、この通達でいう同業者団体や組合等の会費等に該当するものだろうか。これらよりももっと緩やかな団体である町内会やPTAにあっても、最高裁の判例では、
「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、(中略)総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」
と言っている。
 安全協力会費は下請け業者が元請け業者に支払う(徴収される)会費であるが、当該会費について総会が開かれ財務報告がなされたことは一切ないようである。ということは、安全協力会費は上記通達に言う会費・組合費に該当しないことになる。
 そもそも安全協力会費の発端は、元請け業者が建築工事における労災保険を負担することになっていることから、その工事に携わる下請け業者に当該労災保険の一部を負担してもらおうとの考えから発したものである。もちろん、下請け業者に当該労災保険の一部でも負担しなければならないという法的根拠はない。
 ということは、元請け業者が徴収する安全協力会費は下請け業者への支払の値引きであり、下請け業者にすればこの安全協力会費は元請け業者への売上の値引きに相当する。したがって、安全協力会費は、元請け業者にとっては課税仕入れの減少であり、下請け業者にとっては課税売上の減少で有る。
 残念なことに、ネット上では安全協力会費は非課税であるという解説が多くある。それは、上記の消費税通達及び国税庁の解説№6467(会費や入会金の仕入税額控除)において、「その会費が非課税取引として継続して処理し、その旨をその構成員に通知する」場合はこれを認めるというところにある。
 安全協力会費は、上記通達に言う会費や組合費等に該当せず、元請け業者と下請け業者との相対取引の中で発生するものであり、通達に言う会費や組合費等であれば当然総会や当該会費等についての財務報告等が行われるべきものであるが、現実にはなされていない。
 私は今後とも安全協力会費については、原則として元請け業者にも下請け業者にも課税取引として指導して行きます。皆さんのご意見・情報をお待ちしています。



Posted by トムラカイケイジムショ at 14:46│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
建設業の安全協力会費は原則課税取引では?
    コメント(0)